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大島みらい新聞No.36

こんにちは。神戸大学の岡実侑です。

今回は、2016年の三陸復興トークサロンでお話していただき、みらい新聞No.36に掲載させていただいた「コヤマ菓子店」五代目、気楽会会長の小山さんにお話を伺いました。

-本日お伺いしたいのは、復興トークサロンでお話ししていただいた内容についてです。

震災から6年経ちましたが、自分のお気持ちや街、人と人との繋がりなど、どのように変化したと思われますか?

小山さん:

個人的には色々な試みをやってきたけれど、大きく2つ取り上げると、1つ目は気仙沼の若い世代が街のために何かできないかということ。2つ目は自分の事業をどうするか、事業をどのように復興させていくかです。

震災前は家も店もあったけど、津波でどちらも無くなってしまったんだけれど、ようやく来年の2月に家が建つんですよ。結構嬉しい感じかな!笑

ようやく、自分の住まいと仕事場を元通りにしようかなってところです。

(自分のことの)次に街はって考えると、街の復興にはだいたい10年かかると言われてきました。

震災から6年半か経つけど、まだ3年ちょっと残ってるでしょ?

それくらいはまだ復興に時間がかかるって感じです。

10年分の、ある程度復旧するまでの時間の中で、時代がやっぱり、好景気というか、不景気というか、あるいは地方に目が向いているのか向いていないのか分からないけれど、風化とは言いたくないけど、予想以上にあまり注目されてはいないし、「勝手にやってくれ」みたいなのは感じているのが事実です。

”震災からの復興”って肩書きがあるとしたら、それは生き様を見せるというか、そのモデルケースとして頑張るというか、僕らが被災して復興に10年かかるダメージを受けたとして、それが注目されていようがされていまいが、その10年をどうやって生き抜くかっていうのはすごく重要だと思っています。

例えばいつか静岡で津波がきて、復興に10年か15年かかるとなった時に、田舎都会の違いはあれど、どういう心境で生きるのかとか、どうやって復興していくのかっていうのがこれからのモデルケースになると思います。

ということは、僕らがやっていることは自分の家の商売についてもだし、どのような心境で毎日過ごすのかとか、人との繋がり方、地域との繋がり方とか。

地域の良さを生かすとはどういうことかを考えています。

その中で、どのように自分たちの土地の特性を生かしていくかが重要だと思います。

どこの地域でも叫んでいるのが、人をどうやって呼び込むかだと思います。

交流人口を増やして街を活性化させようっていうことで、自分のとこの機関作業があるにも関わらず、観光とか良さをPRすることとかに走ってしまいがち。

それは良いのだけど、それを一部の人でやるのではなくて地域の人がどれだけ理解して自分たちの良いところを伝えるかが重要です。

一部の観光産業の人たちとか、市の人とか、コンベンションの人とかでやるものではないから、どうやって訪れる人全員にとって、心地いい街にするか、それだけが重要だと思います。

気仙沼はそこに関しては一歩リードしていると思います。

なんでリードしているかというと、僕らがやっているからです。笑

確実にリードしていると思います。

それは10年前から若い人たちを集めて、観光って言葉が気仙沼で何も言われない時からずっとどうやって「楽しんで」気仙沼を発信していくかっていうのを常に考えて、しかも、何をやるにしても地域の人を巻き込んでやってきたからです。

今も観光案内をしているけれども、自分たちだけで済ませるのではなく、地域の人に会いに行かせています。

1回10人程の地味なツアーだけれど、震災後は今月で39回だったのかな?

地域の色んな人に協力してもらって、毎回ルートを変えています。

震災の年からやっているから、人々がどういうことに興味を持って気仙沼に来ているのか、どんなことに興味を持つのかとか、将来何が気になるのかとか、そんなことが経験として蓄えられています。

そういう体験はすごく大きいし、どんなにお金を使っても、どんなに人を使ったって買える経験ではないんだよね。それがずっとモチベーション高く、僕らの中で共有されています。

僕たちは、街づくりをするにしてもお金とか規約とかなにもないんだけれども、その代わりに、周りには「仲間」がたくさんいます。

本当に気仙沼を変えたい、行政を変えたい、街全体の方向性を変えたい、お金を使いたい時は、必要があれば一気に変えちゃえばいいと思います。

そういう土台は着々と作っているし、誰からも文句を言われない実績を作りつつあります。

僕の中では5年後、10年後の気仙沼は港町というベースは変わらないけれども、50年後ぐらいには「気仙沼って観光地?漁業の街なの?観光地だと思った!」って言われるぐらい観光の方が盛り上がっている。そんな街にしていきたいと思っています。

-その土台を今作っているということですね。

小山さん:

そう!50年後くらいに情勢されるのはじゃないかな!?

-でも本当に情勢されたらすごいですね。

小山さん:

すごいでしょ!!!

-今まで蓄積されてきた実績や経験をどのようにアウトプットしているのですか?

私も研究室のプロジェクトでまちづくりに関わっているのですが、住民から同意をもらうことが難しいところがあります。それはかなり大変なことだと思うのですが、それをどのように乗り越えてきたのかお伺いしたいです。

小山さん:

今では、ネットやSNSがあるから、ある程度距離は近づきやすくなったと思います。

昔僕が、それこそ10年前に街づくりサークルを立ち上げたときは、ネットやSNS自体がなかったから周囲の人たちや自分たちが何をやっているのかが伝わりにくかったんです。

そんな中でいろんな人に支えてもらいながら行動することができました。

僕は特に秀でた才能は特にないのだけど、積み重ねるのは苦ではありません。

誰でもそうだけど、楽しみながらコツコツ重ねていって、その頑張りをよくする。

その1年をかけて何かをやりたいといったら、毎日できるもの、毎週できるもの、それに向けてできるもの、人が「それはすごいね」といってくれるようなことをやると人は耳を傾けてくれます。

周囲の人に話を聞いてもらえるような関係性を作るのと、何か実績があったこと。これを少しづつ積み重ねて行くことが大切です。

何か1日、2日、1週間で頑張ったからといって、僕の話を聞いて下さいと言うのは、通用しないもので、命を捨てる覚悟がないと人を説得することはできないと思います。

それからできることをした方がいいです。

あと僕は人を楽しませるのが好きだから、余計なことまでしてしまう。

10頼まれたら11で返す。

その1があるかないかでこの人本気で何かしてくれてる、と思ってもらえます。

-(お菓子を見ながら)可愛らしいデザインですね。復興トークサロンの時に、東京で2年間修行されたとお聞きしたのですが。

小山さん:

これは僕は関係ないよ!優秀なスタッフがいて。

すごいんだよ!素人でうちに入ってきて、今はここにある8割から9割作っています。

-すごい!ハマグリ最中クッキーが気になったんですけど、これは?

小山さん:

これは私が考えました。

-そうなんですね。可愛いですね!

小山さん:

試食あるから好きなだけ食べて!

-いただきます!!  

美味しい!!!!!!!

小山さん:

思ったより美味しいからね!

-最中がすごいアクセントというか。最中とクッキーがこんなに合うんだ!

初めて食べる組み合わせです。

小山さん:

ユニークなお菓子の方が人は喜んでくれると思ってます。

例えば後ろにある、ドーナッツって言っててまっすぐだったりとかね。あれ?みたいな(笑)

-笑。思いました。

小山さん:

例えば、これ見せたっけ?おまんじゅうの箱なんだけど。

-ほやぼーやまんじゅう!

小山さん:

あの、僕がずっと観光好きだから、箱が全部観光ガイドになってます。

自分で全部作ったんだけど!

例えば食だとか、祭りだとか、景観とかね。

例えば、イベントも四季折々で、イベントがどういう風に何があるのかとかが書かれています。

-おかし作りだけじゃなく、まちの観光ともお菓子が繋がってるんですね!

小山さん:

そうそう!四季折々でイベントもあるけれど、人が魅力ですよ〜って。

ちょっとユニークな港町の気質があって、歴史があってみたいなことを書いてあって。

こっちをめくると、気仙沼までどうやって来るのかが書いてあるんです。

ちょっと遠いけどね。

-すご〜い!!

小山さん:

ただまんじゅうを作るんじゃなくて、

お問い合わせは観光課の電話番号までのっていて、QRコードで詳しく知れたりするよ!っていう。

これ一個で気仙沼の全てがわかる!

こういうのやっちゃうんだよね。

-これはすごいアイデアですね!

面白いです。

小山さん:

これは全然関係ないんだけど、この箱壊す時に出てくんの!

これ見たら、お!ってなるじゃん。ただそれだけのためにやってます!

こうやってちょっとユニークにすることが僕のポリシーで、生きてる中の楽しみみたいなものでもあるんです。

そういう風にやってくと、例えば普通はまちづくり団体を作りましたってなった時は、会則とか規約とかメンバーって決めるんだろうけど、僕はあえて作らなかった。

だからこそ、色々できるし、もっというと、僕の考えるまちづくりってお金は必要ないと思っています。

それは持続可能かどうかっていう時に、お金がある方が持続可能じゃなくなってしまうと思っていて、だんだんモチベーションが減っていっちゃうから。

お金とか予算があると、このお金で〜した方がいいとか、〜しなくちゃいけないとか。

なんかそういう責任みたいなのが最初に出てきてしまって。

今年もやらなくちゃいけないね、このイベント。みたいになってしまうから。

そうじゃなくて、一番最初はお金も何もなかったけど、こういうことをやりたいんだっていうのが絶対あって、みんなもそうだよね!って言ってどんどん新しいことをやってみようっていうプラスプラスでいったんです。

それが毎回毎回。

例えばお金がないんだったら、お金を稼ぎながらイベントをやろう。

お金を稼ぐイベントを同時にやれば、そのイベントは毎回開催できるわけでしょ。

補助金も否定はしないんだけれど、僕の考えるまちづくりっていうものは、自分の生活している時間以外の時間で、楽しんで何か地域の人と一緒に活動することがまちづくりだと思っています。

要するに、自分の仕事とプライベート以外の時間がまちづくりで。

それは楽しくなきゃダメだと思います。

そのまちづくりっていう時間を市民の人、住民の人が少なくても多くても、常にどこかしらで、そのエネルギーが発散されているのが地域が活性化しているっていう状況だと思います。

だから、例えば数字とか効率とか枠組みとかいろんなのがあるんだけれども、結果でなくてもいいんです。

これやって何になるのって言われてもいいんです。

年寄りだけが集まって文句言って御茶のみしてるだけでもいい。

なんでかっていうと、その仕事とプライベート以外の時間でまちづくりっていう活動に時間を費やして、いろんなところでそのエネルギーが出てるから。

一緒くたにまとめて何かしようと思わない方がいい。

何かたえずそういう、同じことの繰り返しでもやればいいと思います。

それが僕の中ではまちづくりだと思うから。 

そういうとなんか、なるほどね!と思ってもらえるでしょ。(笑)

そうすると、自然と仲間が増えてくる。

だから、会則や規約とかいう縛りもなく、いろんな人を仲間にして、なにか本気で壁をぶち破りたい時は、力をかしてくれ、と。

その本当の目的はやっぱり、しがらみを本気で壊したい時の、武器にしたいってことだな。

自分は市長などにはならなくても、そのくらいのポテンシャルは持ってるぞ、というのが行政にも伝わって、ものすごいポテンシャルになってくるからね。

-堅くならなくても、いろんな人が集まっていって、ということですよね。

小山さん:

そう。そのモデルケースがあるから気仙沼は一歩リードしてると思っています。

10年、20年たったまちのあり方とか、人のまとめ方とかいうのは、僕は全世界に通じると思ってます。

文化や地域の特性は違えど、人をまとめていくやり方や、人を共感させるやり方とか、そしてどうやるか!っていうことは共通していると思う。

これ、本にしたらすごいことになると思わない?(笑)

-その通りだと思います。まちづくりを堅く考えている人たちへも、小山さんはまちづくりというものの真反対のことをやっていらっしゃるので、本当に、新しいモデルケースとして本にしたらどうですか?(笑)

小山さん:

そう思うでしょ。

温めて、ためてるから。(笑)

-そうですね、

~会についてもう少しお聞きしたいです。

始め5人だったとのことですが、活動の中でメンバーが増えたりというような変化はありましたか?

小山さん:

あまり意識したことはないな、増やそうとも思っていないです。

-自然と増えてくるということですか?

あまり組織化しないということかな。

むしろ、なくなってもいいくらい。

データにすると団体という枠で見たくなってしまうんだけど、でも全く違うんだよね。

いろんなところにその考えをもった人が波及してるから。

一度仲間になったりして一緒に活動して、そのイズムを他のところに広げたらいいと思います。

だからくくりとしては団体が広がってるといえるけれど、そうではない。

あとは、唐桑地区で、いろんなまちづくりの団体が作られてるけれど、当たり前だけどだいたい似たようなことをしてしまうんだよね。

“地域の先輩に話を聞こう”とか、“地域の魅力を発信しよう”とか、どこでも必ずやるけれど、それに対して、僕らもうやったよ、って言ってしまうのはつまらないです。

というのは、さっき言ったように、無駄に思えるけど、モチベーションを持った他の若い人が、繰り返してやってもいいじゃないかと思うんです。

もっと深いところで、効果を出したらいい。

言いがちなんだけど、あ~それ僕らも昔やったよね、ああいうことよね、とかね。

そうだとしても、あえて言わないで、なになに?と聞いてあげればいい。

そういう雰囲気を僕らの世代はつくって、下に伝えていきたい。

あえて巻き込んで、若い力を借りようとか思わなくていい。

同世代で楽しいことして、こんなにやったんだぞ!ということを褒められたいものだから。

-そうですね。本当に、十分お話が聞けました!

小山さん:

本一冊くらいね。(笑)

-本日は、貴重なお話をありがとうございました!!


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